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2010年12月9日木曜日

留置場生活を振り返って

 ここまで、留置場で私が経験した一部始終を書いたつもりですが、いくつか付け加えたいことがあります。
 留置場の看守さんは、ベテランの警察官と若手の警察官がペアで24時間交代で任務についていますが、若手の警察官は、将来刑事になる人たちが配属されるそうです。つまり、取り調べや面会前後の被疑者を監視しながら、被疑者の精神状態を確認し、将来刑事になった時に経験を活かすための修行の場ということでしょうか。
 看守さんも人間ですから、いろいろな人がいますが、私の感じたところでは、とても個性豊かな人間味溢れる人が多かったように思います。特に、2本だけたばこを吸うことが出来る、朝の運動の時簡に話しかけてくれる看守さんも多く、最近の気候のことや時事問題や、自分の近況について話してくれたりもします。ある年輩の看守さんは、自分が最近家を建てたので、庭をどうしたらいいのか迷っているとはなし、相談にのってあげたこともあります。また、こちらが出す手紙を検閲しているせいか、私が話してもいないことについてまで心配してくれたり、時にはアドバイスしてくれたりもします。
 手紙を読まれていると思うと、気分がいいものでもなく、初めは(余計なことを言いやがる)と思ったりもしましたが、その言葉が、嫌がらせでもお節介でもなく、本心で言ってくれていると気づき始めると、とてもありがたく感じられました。
 日に2,3度、制帽に何本も線の入った、おそらくこの警察署の上層部の方が見回りにきますが、その時は看守さんも緊張した様子で敬礼をし、「総員18名!移送2名!調べ1名!現在15名!!」などと、大声で、しかも早口で言わなければならないのですが、(入った時は、全く何を叫んでいるのかわからないくらいの早口の大声です)時々若手の看守さんは人数計算が合わない時があったり、言っていることが途中で意味不明になったり、言葉につまってしまったりして、お偉いサンが帰った後、「うわぁー、失敗したぁー」と悔やんでいたりします。
 面会と一日に一度回される新聞以外には、ラジオもテレビもなく、社会と隔絶された毎日の中で、そんな一時がやけに心をいやしてくれたりします。
 そういえば、看守さんの中に誰かクラシック好きな方がいるらしく、昼食の時間の20分間だけ、ラジカセからクラシックのCDがかかるのですが、ある日ベートーベンの「運命」が流れたことがあり、私以外誰も気が付かなかったらしく、私が看守さんに「この曲、ここではまずくないですか?」と言ったところ、看守さんも意味が分かったようで、慌てて曲を変えたことがありました。

 もし何かで逮捕されるようなことがあったら、どんな状況であっても、日本国民としての人権は守られているはずなので、出来るだけ速やかに弁護士を依頼することが懸命だと思います。私の場合、交通違反であったこともあり、すぐに弁護士を依頼していれば、ここまで長く留置生活を送ることはなかったのです。
 弁護士は、お金がなければ国選弁護士を無料で頼むことができます。これは無料といっても弁護士に対して国が支払うことになりますが、それも私たちが支払っている税金からということになります。
 国選弁護士を頼む場合は、預貯金や資産が50万円以下であることが条件になりますが、私の場合は、それらをいちいち証明するわけではなく、依頼書類の中の「ない」という項目にチェックを入れる程度の簡単な書類手続きだけだったので、誰でも依頼できるのではないかと思います。

 逮捕されて、留置所に拘置監禁された時点で「被疑者」となります。テレビや新聞の報道では「容疑者」と言われますが、あくまで法律上は「被疑者」です。そして、警察署内での警察官、刑事による取り調べと、地検での検事による取り調べを経て、起訴された段階で「被疑者」から「被告人」になります。
 「被告人」の段階で、逃亡の恐れや証拠隠滅の危険性と再犯の可能性がなく、余程の凶悪犯罪をおかしていなければ、私のように弁護士を介して保釈請求を出し、保釈金を支払って家に帰ることが出来ます。
 ただ、これから裁判を受ける身ですので、全ての自由が許されているわけではなく、居住地を指定され(たいがい自分の家ですが)、そこから3日以上の旅行は禁止で、3日以内でも申請せずに家を空けたことがわかれば、すぐに保釈取消になってしまい、拘置所に戻ることになります。
 私もこの事と、絶対に車の運転をしないことは、保釈の際に弁護士さんに念を押されました。

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