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2011年1月5日水曜日

C棟7階66室 3201番

 東京拘置所は近年建て替えられたばかりで、最新のセキュリティーを備え、さながら巨大要塞のようでした。12階建ての棟が4棟中央でつながり、8台以上のエレベーターを共有して、屋上にはヘリポートがあります。西側の1棟は12階建ての運動棟になっており、全天候型の10畳程の運動室が数部屋と、テニスコート1面分ほどの運動室が各階にあります。
  拘置所の周りは高さ10mくらいの分厚いコンクリートの塀で囲まれていて、その周囲はこの施設で働く人たちの公務員宿舎があり、窓を開けると公園で遊んでいると思われる子供のはしゃぐ声さえ近くに聞こえてきます。
  そんな、どこにでもある日常がすぐ隣にあるのに、けれどもここは確かに、そびえ立つコンクリート塀に囲まれた、社会とは隔絶された場所なのです。独房の窓の外は外廊下が廻っていて、上下に付いたルーバーのわずかなすき間から、遠くのビルと高速が少し見えるだけで、7階であるからといって周囲の景色を見られるわけもなく、当然外からも中の住人の様子を伺い知ることはできません。
 建物自体が新しいので部屋はまだきれいで、一瞬、病院の個室のようではありますが、白いコンクリートの壁を良く見ると、前の居住者が書いたと思われるいたずら書きがうっすらと消えずに残っていたり、便器横の壁には何かを擦り付けたような痕もあります。
 余計なものは一切なく、さらに自殺防止のためにいろいろな工夫がほどこされています。例えば、壁につけられた私物棚は、両側の枠が丸くなっていて、紐などを掛けられないようになっていたり、タオル掛けの棒も、バルサ材でできていて、(建築関係の方はわかると思いますが、あれはあきらかに型枠に使う台形の面木でした)ちょっと力をかければすぐに折れてしまうような素材です。あらゆるものに突起や角がなく、食事の配膳時に開くA4サイズほどの小窓の棚も、角が面取りされていました。

 

       私物棚 ↓          とにかく、私はこの先の不安を抱えたまま、C棟7階66室の住人となり、これから2週間の間はは未決囚として過ごさなければなりません。判決後、2週間の間は刑が確定しておらず、その間に控訴することができますが、私の場合は控訴したところで結果は同じですので、静かに時間が過ぎるのを待つことになります。そして控訴期間が過ぎれば刑が確定し、刑務所に送られることになります。この、未決の期間はある程度の自由が認められており、(自由と言っても部屋の外には出られませんが)自弁で(自費で)リストに載っているカップヌードルや惣菜、インスタントコーヒーや下着類を買ったりできます。頭を坊主にする必要もなく、服装も囚人服ではなく自分の服を着ることも許されています。朝の9時から夜9時まで、食事の時間を除いてラジオが流れており、午前10時と午後3時にはカップヌードルやインスタントコーヒーのお湯を入れてくれ、その時に購入した缶詰の蓋を開けてもらいます。
 ただ、退屈ほど苦しいものはありません。
 本を読んだり日記を書いたりしますが、さすがに一日中そうしているわけにもいかず、段々この生活に疲れてきます。気が狂いそうにもなります。ひどく無駄な時間を送っている気がしてくるのです。
 私は控訴するつもりもないのだから、さっさと刑務所に送って欲しいと、何度も思いました。

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