なかでも、受刑者の方が最初にやらなければならないのが、各階の入所者の世話をする仕事です。ここでは「掃夫(そうふ)」と呼ばれ、各階に2名ずつ配置されて、ベテランは”大型”、新入りは”小型”と呼ばれます。名前を呼ぶわけにはいかないために、こんな呼び方をするのでしょうが、やはりこういう施設独特の呼び方であり、非常に違和感を覚えます。
彼らは看守の手伝いをメインにしますが、朝から晩まで実に様々な仕事をこなします。
朝6時半には各階の詰め所に集まり、食事の配当の準備をします。点検(点呼)が終わると、「配当、配当、深皿一枚、平皿一枚」などと放送を入れ、66部屋ある各房をまわってドンブリ飯を配り、プラスチックの皿におかずを配ります。これは、朝昼晩の三食あり、昼や夜の時はおかずも2種類以上あるため、手際よくやらないと時間もかかるし、分量を均等に入れないと余りすぎたり足りなくなったりするので、結構コツがいるようです。ミスれば看守に怒鳴られ、作業をしながらもネチネチと小言を言われ続けます。そして、食事が終わると「空下げ(カラサゲ)」の放送を入れて、食べ終わったドンブリと残飯を回収して廻ります。
願い事のときに要望があれば、各房のチリ紙、歯磨き粉などを充填し、注文された食品や雑品を配ります。
週に2回ある官本の貸し出しの時は本を配り、食事の前にはお茶の配当と、10時と3時には缶詰開け、その他にも報知器でのランプがつけばその房に行って用件を聞いたり、下着やシーツの交換に廻ったりします。
入所者が出ていった房の掃除と、幅4m、距離は50m以上ある廊下を掃除し、4ヶ所ある風呂の掃除もします。夏場は二週間に一度、各房のトイレの消毒もします。入所者の中には頭のおかしい人もいて、うんこや小便を撒き散らしている房があれば、それも掃除します。
労役や懲役がいる他の階の掃夫は、この他にも袋貼りの指導もしなければなりません。
とにかく彼らは朝早くから、夕食が終わる夕方5時頃までは、昼食後の30分ほどの休憩以外、ずっと働いており、土日祝日は大型と小型が交替で作業をするので、どう考えても労働基準法をかなり上回る労働時間を強いられているはずです。
そして、手順を間違えたり要領が悪かったりすると、看守からかなりきつく叱られ、怒鳴られます。ベテランの大型はそれほどではありませんが、小型は新人で当然手際も悪いので、日に何度も怒鳴られ、それでも反抗するわけにはいかないので、中にはうつ病になってしまう人もいるようです。
受刑者になれば、この掃夫の経験は通らなければならない道らしく、ここで小型から大型になり、3ヶ月以上経験を積めば、希望により別の作業に回されるようです。
私は、いずれこれを経験しなければならないかもしれないと思うと、それだけで胃が痛くなりました。
ところで前にも書きましたが、ここでは看守を「先生」と呼びます。もちろん掃夫もそう呼び、作業が完了した後は、いちいち確認を頼むために「先生!お願いします!」と先生に報告をします。
何故に看守が先生と呼ばれているのか、非常に不思議です。私は日頃から「先生」と呼ぶのはお医者さんと学校の先生だけだと思っており、議員を先生と呼ぶのはもってのほかであり、弁護士や検事や裁判官を先生と呼ぶのでさえ逆職業差別であると思っているので、相当な違和感を感じます。その上、看守も「先生」と呼ばれて増長しているのか、かなり威張りくさっています。
あんたら、単なる「公務員」ではないのか?
やはりここは、世間一般とはかなりズレのある世界のようです。
ここでは、10時と3時に10分間、室内運動とストレッチの放送が毎日流れます。
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